① 離婚届を出す話し合いがまとまらないときは
離婚に向けて話し合いをしてきましたが、まとまりません。そんなときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てをするのが普通です。いきなり離婚訴訟をしたいという方も見かけます。しかし、法律で、離婚に関しては裁判をする前に必ず調停をやらなければいけないと決まっています。
② 離婚調停では何を決める?
離婚調停で決めるべきことがらは、離婚調停の申立用紙に書かれてあります。離婚後に子どもの親権者をどちらにするか、一緒に暮らさない親が払う養育費をいくらにするか、一緒に暮らさない親がどれくらいの回数や時間的間隔で子どもと会ったり交流したりしていくのか、財産分与をどうするか、年金分割をどうするか、慰謝料をいくら払うことにするか、なとの事項を決めていきます。
盛りだくさんですが、離婚調停では、全部のテーマを取り扱っていきます。それでも手数料は事件1件分です。
申立書の中で、どのテーマでどんなことを決めてほしいのか、を書いていきます。必要がないテーマは記入しなければよいのです。
③ 離婚調停はどう進行していく?
調停申し立てをすると、家庭裁判所が相手方を呼び出して、調停期日を開いていきます。初回は、相手方の仕事の都合などを無視して日取りが決められますので、相手方が来られないことも多くみかけます。ただ、2回目は相手方の都合も考慮して、日取りを決めますので、2回目以降が実質的な話し合いということになります。
中には、離婚調停には行かないという相手方もいます。そのときは家庭裁判所のスタッフにお願いをして、家庭裁判所の調停の話し合いに参加してくれるように、相手方に勧告をしてもらうことができます。出頭勧告と呼ばれます。
別居して片方が実家に帰ってしまっているときは、遠い家庭裁判所には行けないということもありますが、最近は、リモートで調停に参加できることも増えてきました。離婚調停を扱う裁判所は、基本的には相手方の住所に近い家庭裁判所ですが、下関に住んでいるが、勤務先は小倉だという場合には、どこの家裁を使うかということだけに関する合意をすることが可能です。福岡家裁小倉支部を使うという管轄合意書を双方で作成すれば、小倉の家裁に離婚調停を申し立ててもかまいません。
離婚調停の進行役は、家庭裁判所の調停委員男女各1名のケースが多いです。難しい問題を抱えている離婚調停では、3人調停も見かけます。
担当裁判官が必ずいるのですが、調停事件は同じ日・同じ時間帯に一人の裁判官が5件、大きい家裁では20件を担当しているため、裁判官は調停室にはやってきません。ですが、調停委員は必ず裁判官と打合せをしますので、裁判官による影響も大きい場合があります。
調停はだいたい1ヶ月に1回のペースで進行していきます。1年以上長期間になってくると、調停を利用している利用者側でも調停が前を向いて進むように努力する必要も出てきます。
子どもがいる夫婦の離婚調停のうち、難しいケースでは、家庭裁判所調査官が調停室に列席することもあります。必要に応じて、家庭裁判所調査官による面接調査が行われたりすることもあります。
調停は、だいたい妻と夫とを別々に事情聴取し、別々に要望を聞いていき、別々に譲歩を引き出したりと、個別に進行していきます。中には、まれにあえて妻と夫とを同席させて、一挙に調停を進行させることもあります。同席調停と呼ばれます。ただ、暴力の危険があるとき、相手方の前では心理的に圧迫されて自由に話ができないときは、同席調停は辞退してもかまいません。
④ 離婚調停で親権の取り合いになった
離婚届を出すのにも、未成年の子どもの離婚後の親権者をどちらにするか、は決めておかなければなりません。同じように、調停離婚のときも、未成年の子どもの離婚後の親権者をどちらにするかは決めておく必要があるのが大原則です。
親権者指定の問題で暗礁に乗り上げてしまったときは、離婚調停は打ち切られ、あとは、離婚訴訟で判決を取って、判決の中で離婚条件を決めてもらうのが普通です。
ただし、離婚裁判は大変だからやりたくないというときは、親権者指定の審判申立てを別にして、離婚後の親権者は親権者指定の審判手続で決めてもらい、ひとまず離婚してしまうというやり方もあります。このときは、親権者指定の審判が確定するまでは、離婚後も共同親権となる扱いです。
そうはいっても、この親権者指定の審判を別に申し立てて、そこで離婚後の親権者を決めることにして調停離婚するという手法は民法ではっきりと書かれてあるのに、あまり使われていません。代わりに、親権者指定の判断だけを家裁に任せるというやり方もあります。調停に代わる審判という形の裁判をしてもらい、双方がその判断結果に従うというやり方です。
もっとも、圧倒的多数は離婚裁判に手続を変えるやり方です。
⑤ 離婚調停が打ち切られたら?
離婚条件も含めて離婚の合意ができれば、調停離婚するということになりますが、離婚条件の合意が全部はととのわないときは、離婚調停は打ち切られます。
打ち切られた後は、どうしても離婚したい側が離婚訴訟の提起を検討することになりますが、離婚訴訟を提起するには、法律上の離婚原因がなければなりません。離婚原因がないときは、再度、時間をおいてから、調停を申し立てるしかありません。
離婚原因があっても、たとえば、自分が不倫をして家庭を壊してしまったというように、自分に結婚生活が壊れた原因があるときはやはり離婚訴訟は起こせません。このときも、時間をおいて、再度、調停を申し立てるしか方法がありません。
他方、離婚できるなら離婚しようかと思って、離婚調停を申し立てたが、調停が打ち切られたあと、裁判までして離婚したくはないという方もいます。特に、結婚相手からメリットは受けていないが、今のままでも取り立てて困らないということもあります。そのときは、放置することになります。
離婚調停打ち切り後の対応も人それぞれです。
⑥ 離婚調停で合意はできたが、裁判所に本人が行けない
あまりないことですが、離婚調停で離婚条件も含めて離婚の合意がととのったものの、ご本人が家庭裁判所にどうしても来れないというケースがあります。
自分が死ぬ前にどうしても離婚だけはしておきたいと思い、調停を代理人となる弁護士を使って進行させ、どうにか離婚条件も含めて全部合意できたが、自分は病院の生命維持装置につながれていて、病室からは出られないということもあります。弁護士はどこまで行っても代理人という資格になります。結婚するのに代理人で結婚を決めるということがナンセンスなように、離婚も本人でないと決定できないことになっています。そのため、この場合は、厳密には調停を成立させることができず、調停に代わる審判という形で、審判離婚をするほかありません。
いまは、リモート調停の活用も進んできていますので、病室から本人がリモート参加できれば、調停離婚を成立させていくことができるようになるのでしょう。
⑦ まとめ
離婚届を出す話し合いがまとまらなければ、次は家裁の離婚調停を活用します。話し合いは、調停委員を通じて行っていきますから、第三者の立ち会いが入るメリットはあります。他方、調停委員は必ずしも法律の専門家ではありません。なかなか理解してもらえなかったり、調停委員自身の思いこみが強くて難儀することもあります。話し合いがまとれば調停離婚することになり、離婚届は提出しますが、離婚の効力は調停成立時点となります。