① 離婚問題での弁護士の仕事
離婚問題が起きると、すぐに弁護士に相談することはあまりなく、友人だったり、両親であったり、ということが多いと思われます。弁護士に相談すれば、料金もかかるし、なんだか行きづらいという方も多いのではないでしょうか。何より、弁護士には何をしてもらえるのか、ということ自体もよく分からないという方もいると思います。
一つだけはっきりしていることは、離婚するかどうか、多少の迷いは誰しもあるもの。その上で、方向性として離婚するのか、離婚しないのか、といった意思決定自体はあなたがするしかありません。弁護士に決めてくれという方もいますが、それはできないのです。
その代わり、弁護士が多様化している現在では、弁護士がしてくれる仕事(サービス)も一昔前のような裁判所利用時だけというものでもなくなってきています。
② 法的な見立てを知る
一番オーソドックスな弁護士の仕事といえば、法律相談です。離婚したいと方向性をあなたが決めたとき、それでは、法律的には離婚できるのか、どんな法的手段を使えばよいのか、法律的にはどんな離婚条件が勝ち取れるのか、あるいはどんな離婚給付の支払いをしなくてはならないのか、子どものことはどうなるのか、といったことがらについて、あなたの立場から、法律的な見立てをしてもらえます。
弁護士は、妻側から依頼を受けることもあれば、夫側から依頼を受けることもあります。若い世代の離婚を担当することもあれば、高齢の世代の離婚を担当することもあります。あなたからの相談に対して、反対側から見た場合の対応がどうなるか、といった点についても引出が豊富にあります。もちろん、法的な知識は専門領域ですから、その点に関する引出も十分にあります。あなたの立場からの見方にはなりますが、いくつかのシュミレーションをすることができるのです。
ただし、正確に判定するには、相手の言い分も知らないといけないですし、あなたの前提がそのまま通用するとは限らないことも多いですから、あくまでもあなたにとってベストの法的な見立てを知るということになります。
その中で、弁護士から法的には無理であると指摘されたことについては、それならば、どのように対処していくか、ということも一緒に相談していくことになります。
一回では整理し切れなければ、継続して法律相談を受けることも可能です。
③ 他の弁護士のセカンドオピニオンをとる
相談した弁護士から、法的にはあなたの要求は無理があると言われたり、思っていたほど慰謝料は取れそうもない、という回答を受けることはあり得ます。
ただ、医者が人によって違う治療法を採用することがあるように、弁護士も人によって違った見方をする場合もあります。病気のときに複数の医者にセカンドオピニョンを聞くのが当たり前になってきているように、弁護士の回答も今や、セカンドオピニョンをとるのが珍しくありません。
セカンドオピニョンを希望される場合には、以前に相談した弁護士には、どのような情報を提供した結果として、どんな回答をもらったのか、ということを詳しく教えてください。納得できないからセカンドオピニョンをとるのですから、前の弁護士の回答にはあなたが不満を感じていることは分かり切ったことです。セカンドオピニョンをとるときに、次の弁護士に話すべきことは、不満点ではなく、どんな相談の仕方をしたのか、受けた回答は正確にはどうであったのか、その回答は留保条件付きではなかったのか、といったことをお話いただきたいわけです。
それによって、前の弁護士の意見は適正だけれど、別の見方として別の方法をアドバイスしてもらえることもあります。
④ 自分の希望の限界を知る
いざ離婚となれば、将来の自分のことや子どもたちのこと、何かと不安はつきものです。相手方からはとれるときにとれるだけ取りたいと思ってしまうのは、人情の常です。
逆に、相手方は支出・負担はできるだけ少なくしたいと考えているかもしれません。
弁護士に相談するメリットの一つは、ダメな要求はダメといってもらい、適正な法的要求に絞り込んでいく作業ができることです。あなたに離婚後の人生が開けていくように、相手方にも離婚後の別の歩みが待っています。離婚するときには取りたい放題ではなく、どこまでが適正な要求なのか、あなた自身が我慢しなければならない限度はどこまでなのかを知っておくことは重要です。
要求が適正な範囲に収まれば、相手方の抵抗も少なくなり、裁判などの重たい手続を避けることもできる場合があります。
さらに、家裁の調停を使う必要が出てきても、弁護士に同行してもらうなどの全面的な代理サービスを頼むまでもなく、調停の現場にはあなたこ自身だけが出向き、背後からサポートしてもらうサービスを受けるのにとどめられることも出てきます。
⑤ 優先事項をくくり出す
離婚条件には、子どもの親権者をどうするか、養育費をどうするか、子どもと同居しない親と子どもとの交流をどうするか、財産分与をどうするか、などなど、さまざまなものが出てきます。
全部についてあなたの要求を最大限、実現できればよいですが、離婚も結婚と同じく、相手のあるもの。どうしてもこれだけは、という優先事項をくくりだしておくことも必要です。ほかのところは譲歩できても、これだけは譲りたくないという離婚条件は、人によってさまざまです。中には、離婚後の苗字や戸籍に対するこだわりを最優先とされる方もいます。広い意味での離婚条件の中には、相手の意向を気にする必要のないものも入っています。
その区分けについても、弁護士からアドバイスを受けると、気持ち的にも楽になる場合があります。
⑥ まとめ
弁護士の離婚問題の仕事といえば、法律相談や離婚調停の代理、裁判離婚の代理がメインですが、セカンドオピニョンを求めることや、調停自体は自分で対応するが、そのサポートを受けるなど、最近はサービス内容も多様化してきています。あなたがどんなサービスを受けたいかを率直に相談してみてもよいかもしれません。ただし、離婚するかどうかの態度決定だけはご自分でなさってくださいね。