離婚における別居に向けた準備について弁護士が解説

1.離婚における別居とは

 離婚、とりわけ家庭裁判所を使ってでも離婚したいという場合には、大前提として別居していることが普通です。

 理屈の問題ですが、家庭裁判所で離婚を認めてもらうためには、少なくとも、「婚姻が破綻していること」が必要です。この「婚姻関係の破綻」の意味というのは、実は、最高裁判所の判例があって、①現在、実際に夫婦関係が円満を欠く状態であること、に加えて、②将来的にも円満な夫婦関係の回復が見込まれないこと、の2つの要素を満たす必要があるとされています。

 もし、家庭裁判所で離婚調停をやっていても、その際に、まだ同居中ということになりますと、②の要素が欠けてしまうと判断されてしまう場合があります。まだ同居しているんだから、やり直しは可能なのではないか、いったんは円満関係調整方向で調停なり、和解なりを進めていこうという方針が採られてしまうことがあります。

 また、現実に、離婚して新生活を踏み出そうというのに、いつまでも同居しているのでは、新生活への準備もしづらいとも思われます。

 本当に離婚したいという場合には、まずもって、別居中の状態で法的手段をとっていくのでないと、離婚したいという主張に説得力もなくなってしまいます。

2.離婚における別居に向けた準備について

 とはいえ、なにも準備しないまま別居するというのも無謀です。同居中だからこそ手に入る情報も多く、いったん別居してしまうと手に入らなくなる情報もあります。同居中に、別居してしまうと入手できなくなる資料はできるだけ集めておきたいものです。

① 財産分与の情報収集

離婚の際には、夫名義・妻名義の全財産を寄せ集めて、それをそれぞれが2分の1ずつ取得できるようにしていく作業をします。財産分与といいます。

分与といっても、イメージ的には夫婦財産の分割という方が正確です。

別居時の双方の保有財産を集計していくわけですが、相手の財産の保有高が分からないと財産分与のスムーズな進行ができなくなります。

そのため、別居前には相手名義の預金通帳のコピーはしておきたいところです。最低でも、別居時に使用中の通帳はコピーしておきたいところですが、できれば、過去の通帳も可能な限り、全てコピーしておきたいところです。

保険商品についても、証券会社で運用中の投資商品についても、取引報告書などをコピーしておけるとベストです。

② 不倫の証拠収集

不倫の慰謝料請求をしたいというときは、不倫の証拠が必要です。ラインなどのSNSのやりとり程度では証拠としては不十分です。やはり、調査会社に素行調査をしてもらい、不倫相手とラブホテルに2回以上入っている調査報告書が欲しいところです。同居中にまだバレていないと思っている最中に、調査会社に次に密会する時期・日時などが分かれば、ピンポイントで調査してもらうのがよいのです。当てもなく尾行させてしまうと、調査費用がべらぼうな額になってしまいます。

次の密会の時期が分かるチャンスがあるのは同居中しかありません。

③  子どもがいる場合の準備

子どもがいるときには、子どもを連れて出るかどうか、判断することになります。従来は、子連れ別居は特にそれ自体が違法であるということではありませんでしたが、改正民法が施行されるようになると、婚姻中の共同親権下では子どもの居所指定権は父母が共同して行使する必要があることが明確化されましたので、一方の親が子どもを連れて勝手に別居したとなると、今後は、連れ去られた側の親の親権を侵害したものとして、慰謝料請求がされる可能性もあります。

とはいえ、DVがひどい場合などには、加害者である親の承諾を得て別居するということもできませんので、DVや児童虐待証拠を明確にして、児童相談所などの行政も関与させた上で、別居に踏み切ることが考えられます。

児童相談所などの行政への相談、必要があれば警察への相談、また、別居先での子どもの世話を助けてもらう保育園・幼稚園などの確保、協力してくれる親族の確保なども大切なことです。

④ 婚姻費用分担請求の準備

別居すると、他方配偶者からの生活費の支払いが止まることが往々にしてあります。そのときは家庭裁判所を使って、離婚までは生活費を支払ってもらうように、婚姻費用分担請求をします。その際には、夫婦双方の源泉徴収票もしくは確定申告書が資料として必要となります。

同居中に他方配偶者の源泉徴収票か確定申告書のコピーをしておければベストですが、最近は、源泉徴収票も勤務先会社のサーバーからダウンロードするところも多くなり、留守中に紙の源泉徴収票をこっそりとコピーすることも難しくなりました。

ただ、同居中であれば(住民票を同一世帯のままにしている間は)、市役所・区役所で相手配偶者の所得証明書を取ることができます。これは別居してしまうと取得できませんので、同居中に取っておきましょう。

3.別居についてお考えであれば弁護士に相談を

 別居の際にどんな準備をすべきかについてひととおりお話ししてきましたが、現実には、皆様の置かれている立場によって、なすべき準備が微妙に違ってきます。現実にこれから別居をお考えの方は、別居に踏み切る前に一度弁護士にご相談くださることをお勧めいたします。

お一人で悩まず弁護士にご相談ください。 TEL:083-976-0491 受付時間 平日 10:30~18:00 お一人で悩まず弁護士にご相談ください。 TEL:083-976-0491 受付時間 平日 10:30~18:00

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