離婚における別居期間とは?別居時の注意点について弁護士が解説

1.離婚における別居とその期間について

  多数の夫婦は、結婚して同居生活をし、不仲となると別居して、やがて正式に離婚していくというコースをたどっていきます。逆に言えば、離婚する前にはたいていの場合に不仲となって夫婦が別居するという事態があることが多いということになります。

 ここで別居というのは、不仲になっての別居ということをさしています。関係は円満なままだけれど、仕事の都合、子どもの進学先の都合などで単身赴任したり、一時的に別居したりするような場合は、ここでいう「別居」には当たりません。

 法律上、離婚との関係で別居期間が問題とされるのは、不倫するなどして自ら家庭を壊して別居した側が、離婚請求をしたいという場合です。不倫するなどして自分で家庭を壊した側の配偶者は、婚姻破綻について責任の有る配偶者という意味で「有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)」と呼ばれます。基本的には、有責配偶者からの離婚請求は許されません。法律上は、婚姻関係が破綻していれば、婚姻を継続し難い重大な事由に該当することにはなるのですが、自分で不倫するなどの悪いことをしておきながら、その悪いことをしたから裁判所で離婚を認めてくれというのは、自分の不正義を理由に裁判上の請求を認めろ、というようなものだから、許されないのです。

 ただ、一生形骸化した結婚に縛られるというのも行き過ぎの感じがありました。そこで、最高裁判所は例外的な場合として、有責配偶者からの離婚請求であっても、別居期間が相当長期間に及び、夫婦間に未成熟子がおらず、かつ、離婚を認めたとしても他方配偶者に経済的・社会的・精神的に過酷な事態を生じさせない場合には離婚請求を認めることにしたのです。

 このときにどのくらいの別居期間が必要なのかが、議論されてきていますが、多くの裁判例の中で判断が分かれてくるのは別居期間が7~8年程度の場合です。裏を返すと、だいたい別居期間が10年以上になってくれば、ほかの二つの条件を満たすならば、有責配偶者からの離婚請求も認められる可能性があるということになります。

 有責配偶者からの離婚請求でないのであれば、法律上は正面から、離婚認容に必要な別居期間というようなものは定められていません。しかし、もちろんまだ同居しているのであれば、やり直したらどうかとも言われかねません。

 もともと、裁判離婚で離婚を認めてもよい、「婚姻を継続し難い重大な事由」というのは夫婦関係の破綻をさしているといわれていますが、夫婦関係の破綻というためには、現時点で不仲であることだけではなく、将来的にも円満な夫婦関係の回復の見込みがないことも必要です。まだ同居中あるいは別居しても期間がそんなに経過していないのならば、やり直したらどうかと言われてしまうのは、こんなわけがあるからです。

 逆に言うと、不仲なまま別居期間が長期間に及んでしまえば、生活基盤も別々のものとして安定してしまい、いまさらもとには戻らなくなってしまいます。それはまさに、婚姻関係破綻の現れともいえます。

 最近の家庭裁判所では、そのような理解のもとでか、ある程度の別居期間があると、ほかにめぼしい離婚原因(DVや多額の借金など)が証拠上認められない場合でも、婚姻関係の破綻を認定して離婚を認める傾向にあります。

2.離婚に必要な別居期間

 それでは、家庭裁判所で離婚を認めてもらえるだけの別居期間というのは何年程度なのでしょうか。

 一概には言えませんが、もはや元の鞘には戻らなくなったといえるだけの長期間の別居であるということはいえます。結婚期間が5年しかない夫婦であれば、別居期間が4年にも及んでしまえば、婚姻破綻を示唆するだけの長期間の別居期間ということになりましょうし、結婚期間が10年の夫婦であれば、別居期間が3年ではまだ回復不能な程度にまで破綻したとはいえないと判断されることもありましょう。

 事案ごとにも判断が違ってきますし、極端な言い方をすれば、担当裁判官の感覚によってもずれてくることがあります。

 一つ言えるのは、離婚調停やその後の離婚訴訟が長期化してしまい、ひいては別居期間も長期化してしまったというケースでは、調停や裁判が長引けば長引くほど婚姻関係破綻を示すだけの別居期間に近づいていくということもあり得ます。

3.別居において注意するべきこと

 ① 無断で出て行かない?

別居といえば、当然のように、ある日突然子どもを連れて出て行くというのが定番でした。DVが原因で、避難するしかないような場合は今後も、無断で突然、気づかれて妨害されないうちに出て行くことにはなろうかと思います。

ただ、離婚後共同親権制度などを定める改正民法が施行されると、子どもの居所指定権は父母による共同行使が原則とされますので、一応、別居と子どもを連れて出ることについての話し合いはした方がよいことになりそうです。そんな話し合いが現実にできるのか、意見がまとまらず、夫からは子どもは置いて出て行けと言われたのに、連れ出した場合に、夫の居所指定権を侵害した法的な制裁がどのように課されるのか、などは現在は分からない状態です。法律が施行されるまでの2年間に、法務省がガイドラインを策定する動きもありますので、法務省の動きも注視しておく必要もあります。

 ② 子どもが連れ去られないようにする

別居後に、子どもを連れて出たことについて、他方配偶者から異論が出されて、場合によっては、家庭裁判所に子の引渡しの審判事件が申し立てられることもあります。その場合には、弁護士にも相談して対処していきましょう。

また、他方配偶者やその親などが共謀して学校からの帰り道などで子どもを奪い返すこともあり得ます。そのような実力による現状変更は、たとえ実の親であったとしても、場合によっては誘拐罪などになります。速やかに警察に相談するとともに、弁護士にも相談して、子どもを取り返す算段をつけていく必要があります。

  ③ 別居期間中の異性との交際について

別居したといっても、まだ離婚が正式に成立していない段階での、配偶者以外の異性との交際はお勧めできません。差し控えるようにするのが無難です。婚姻関係破綻後の異性との交際自体は、理屈上は、その異性との交際は婚姻関係破綻と無関係ですから、慰謝料の支払義務は生じないはずですが、婚姻関係破綻の有無の認定がどうなるかは裁判官次第、証拠次第です。わざわざリスクを抱え込むことはありません。

また、離婚後の子の親権をめぐって、別居期間中の異性の交際相手が不利な影響をもたらす場合もあり得ます。万が一にも、別居期間中の異性の交際相手が子どもに暴言、暴力、面前での性交渉などに及んでしまった場合には、児童虐待として児童相談所の介入もあり得ますし、そうなると、子どもの親権獲得は望み薄となってしまいます。

異性との交際は、正式に離婚が成立し、子どもが離婚後の生活環境に順応してからにされた方が無難であるといえましょう。

4.別居についてお考えであれば弁護士に相談を

 離婚する際の別居期間や別居期間中の生活などについは、意外に複雑な問題がつきまといます。離婚できるかどうか、離婚できたとして離婚後の生活がどうなるかを左右しかねない問題ですので、念のため、弁護士にご相談くださった方がよろしいでしょう。    

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