離婚における別居中の生活費はどうする?婚姻費用について解説

1.別居とは

 夫婦が不仲となると、別居するようになり、やがて離婚することが多く見られます。この記事で「別居」というのは、このような離婚になるかもしれない夫婦不仲の状態で別離して生活することをさします。

 物理的に別離して生活していても、夫婦関係自体は円満なままである単身赴任や、遠隔地での子どもの進学の際の手助けのための別居は、この記事で解説する「別居」ではありません。

 夫婦仲が円満である場合には、中心的な稼ぎ手である配偶者から、他方に対し、家族の生活費が渡されるのが普通です。もちろん、失業などの事態が起きれば、家族全員が影響を受けますが、そういうことでもない限り、分相応の生活費に困ることはありません。

 ところが、夫婦不仲となり、別居するようになると、中心的な稼ぎ手の配偶者から自発的に生活費が渡されなくなることもあります。また、同居中であれば、住居費にしても、炊事道具にしても、家具にしても、家族共通で使い回せますから、1世帯分あれば十分ですが、別居となると、住居費は2世帯分かかりますし、炊事道具・電化製品等も別居した側は新たに準備しなければならず、同居中よりもむしろ支出は増えます。しかし、夫婦が不仲となって別居したからと言って、収入が増えるわけではありません。別居した後の、夫婦、家族の生活費はどうなるのでしょうか。

2.別居中の生活費はどのように確保するのか

 別居すると支出が増え、住居費は2世帯分かかるようになりますが、別居したからと言うことだけでは夫婦の収入は増えません。そうなると、別居した側は、それまで専業主婦であったとしても働きに出る必要がありますし、同居中パートで働いていたのであれば、パート枠を増やすなどして、自らも収入を増やす努力をする必要があります。

 幼い乳幼児を抱えて働きに出られないというときでも、実家の援助を受けるなどして、できるだけ就労するように努力することが、離婚後の堅実な生活設計を立てる上では重要です。現実に就労することが重要だというのは、別居中の稼ぎ手である配偶者に生活費を請求する場合に、働けるのに働いていないことがマイナスに響く可能性もあるからです。

 A 別居中は婚姻費用を請求することが可能

別居中は、基本的には、自ら就労して収入を得るように努力しますが、それまで専業主婦だったり、パートしかしていない場合に、突然、一人前の同世代並の収入を稼ぐことまではできません。そして、いくら別居しているとはいえ、まだ正式に結婚中である以上、中心的な稼ぎ手である配偶者には家族に対する扶養義務があります。そのため、たとえ不仲となって別居したとしても、中心的な稼ぎ手であった配偶者に対しては自分と子どもたちの生活費を請求することができます。別居配偶者の生活費と子どもたちの生活費を、婚姻中の配偶者に請求するので、この生活費のことを「婚姻費用」と呼んでいます。婚姻費用には別居中の配偶者の生活費も入る点で、それが入らない「養育費」とは違いがあります。

① 婚姻費用の決め方

 別居中の婚姻費用は、夫婦双方の収入から決まってきます。最高裁判所のホームページでは、連れて出ている子どもの数や年齢構成に応じて、婚姻費用の算定表が公表されていますので、それを見ると、いくら婚姻費用を請求できるのかも簡単に分かります。

 別居中の婚姻費用は、双方の収入から決められます。同居中に子どものバレエ教室やプログラミング塾、英会話塾の費用として現実にこれだけかかっていたから、それを出して欲しいという要求は通りません。希望する支出ベースで決めるのではなく、夫婦双方の収入から婚姻費用の分担額は決められるのです。

② 婚姻費用の範囲

 婚姻費用には、食費、被服費、住居費が含まれているほか、娯楽費、教育費、医療費なども一定額は含まれています。ですので、算定表で出てくる婚姻費用の額以上に、医療費がこれだけかかる、教育費は塾費用がもっとかかる、スポーツ関係の進学を子どもにさせる関係でジム費用がかかる、といっても、基本的には、加算されることはありません。算定表で決められている婚姻費用の範囲内でやりくりをすることとなります。足りない場合には、別居した側の配偶者が収入を増やして賄うしかありません。

 別居したからといっても、親の収入レベルが子どもの生活レベルを左右することは、同居中と変わりません。

 ただ、特別に高額な医療費や、高額な私立の上級学校進学の場合には、算定表に織り込み済みの医療費・教育費との差額分を夫婦で配分して負担させ、算定表の金額より若干加算することは行われる場合があります。

③ 婚姻費用の請求方法

 別居時に夫婦で話し合い、最高裁判所のホームページを見ながら、離婚成立までは毎月算定表の定める金額を婚姻費用として支払う合意をする夫婦は、最近では多く見かけるようになりました。そのような協議ができている夫婦の場合には、離婚後の養育費の話し合いも比較的スムーズに進むことが期待できます。

④ 相手が婚姻費用を支払わない場合の対処法

 別居時に夫婦で話し合っても、中心的な稼ぎ手であった配偶者の側が、最高裁判所のホームページの算定表の金額では支払わないという態度を示すケースもあります。

 そのような場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てて、別居中の婚姻費用を決めて行くこととなります。調停で話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所が審判という裁判の形で決定していくこととなります。

 婚姻費用が円満に協議できない典型的なケースは、別居に踏み切った配偶者の側が実は不倫をしたとか、同居中の生活レベルを落としたくないといって請求額を高めにするといった場合が考えられます。こうしたケースでは、弁護士の助力を受けた方がよいでしょう。

 B 補助金と助成金

 まだ離婚が成立していない別居中の段階で利用できる公的な援助としては、児童手当がありますが、往々にして、児童手当の振込先が同居中のときのまま、中心的な稼ぎ手の銀行口座であることが多く、これがトラブルのもととなります。

 DVの保護命令が発令されていると、児童扶養手当が支給される場合もありますが、保護命令の発令のハードルは高いため、あまり現実的な手段ではありません。

 また、生活保護も基本的には離婚が成立しないと対象とならないことが多く、これもまた現実的ではありません。

3.別居中の婚姻費用についてぜひ弁護士にご相談ください

  別居中の婚姻費用については、最高裁判所がホームページに算定表を公表して以来、それ以前と比較すると、迅速な解決が図られるようになりましたが、細かい問題点は依然として多いところです。気になる場合には、弁護士にご相談いただいてもよいかと思います。

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