1.家庭内別居とは
家庭内別居といわれる現象は、夫婦が物理的には一つの家に同居しているものの、夫婦としての協力・助け合いの関係を全く喪失していて、一つの家の中で、全く別の部屋で生活し、食事も別にし、会話もしない、洗濯・掃除なども夫と妻それぞれが自分のことは自分でやる、というように、同居はしているけれどルームシェアのルームメイトのようになってしまっている状態をさします。
生活費は夫の口座を妻が管理し続けているケースから、生活費も完全に別となってしまっているケースまで多種多様です。
もっとも、「家庭内別居」という法律用語があるわけではなく、あくまでも非法律用語です。
2.家庭内別居で離婚はできるのか?
家庭内別居は離婚理由とできるのでしょうか。
夫婦間で離婚届を出す合意ができてしまえば、家庭内別居が理由であってももちろん離婚することができます。
ただし、協議離婚ができない場合には、家庭裁判所の調停や訴訟を利用することとなってしまいますので、ことはそう簡単には運ばなくなります。
離婚調停ではどうでしょうか。離婚調停は話し合いだという意味では、協議離婚に近い部分もありますから、離婚条件だけで食い違いがあり、離婚すること自体は合意できるというのであれば、家庭内別居が原因でも調停で離婚することは可能となる場合があります。離婚条件さえ調停で合意ができればよいわけです。
しかし、離婚調停は家庭裁判所が舞台となるという意味では、どうしても離婚訴訟での離婚原因があるかどうかという視点も影響します。一方当事者が離婚に応じないという場合には、家庭内別居だと離婚ができない場合が多く見受けられます。
というのも、離婚訴訟では、原因のいかんを問わず、婚姻関係が破綻していれば、裁判離婚の離婚原因となる「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといわれるのですが、婚姻関係の破綻は、最高裁判所の判例によれば、現在夫婦関係が円満を欠いていることに加えて、将来的にも円満な夫婦関係の回復が見込めないことの二つの要素を備えている必要があります。
家庭内別居は、外形的には同居ということになりますので、将来的には夫婦関係の回復が見込めなくもない、円満な関係回復の可能性があると判断されてしまうことが多いのです。
そうなると、離婚調停の場合、家庭内別居の状態のままでは、一方が離婚したくないというと離婚はできないことになってしまいます。
離婚訴訟になったときでも、同じことがいえます。
3.離婚をするために必要なこと
そのため、どうしても離婚を実現したいということになれば、物理的にも別居に踏み切るのが無難です。
ただ、別居する前に相手方の財産の詳細については資料をコピーするなり、市役所で所得証明書を取得しておくなどの準備をしておく必要はあります。
逆に、あなたが相手方に財産管理をされているのであれば、預貯金等の財産の管理を自分自身でできるようにしておく準備も必要です。
詳しいことは弁護士に法律相談でお尋ねください。
4.家庭内別居のメリット
家庭内別居のメリットは、戸籍上正式な離婚に踏み切ることが難しい場合に、戸籍上の正式な離婚に向けて頑張らずに、事実上の離婚状態で満足し、生活費が支給されているようであれば、衣食住の心配をしなくて済むことです。
また、籍が抜けませんので、不仲な配偶者が死亡した場合には配偶者として相続することが可能ですし、遺言書を遺されてしまっても、最低限、遺留分の保障を受けられる点はメリットといえばいえます。遺族年金制度がある場合には死亡した配偶者の遺族年金を受け取れる点もメリットです。
5.家庭内別居のデメリット
ズバリ、相手が同意しない限り、いつまでも離婚ができないことです。
家庭内別居という中途半端な状態では、運が良ければ離婚ができますが、下手をすれば、いつまでも家庭内別居が継続して籍は抜けないということになります。また、家庭内別居から物理的に完全な別居に踏み切る前に準備しなければならないこともあります。
時間を無駄にしないためにも、まずは、弁護士にご相談ください。