夫が出て行ってしまった!生活費(婚姻費用)はもらえる?

1.夫が出て行ってしまった場合でも、生活費(婚姻費用)支払いの義務がある 

夫婦で同居して生活していたが、突如、夫が家を出て行って、戻ってこないというケースはときどき見かけることがあります。 

夫が家を出て行くケースにもいくつかパターンがあります。 

A 一つ目は、夫が不貞行為をして、不倫相手のもとに出奔してしまい、戻ってこなくなるケース 

B 二つ目は、夫が精神的に参ってしまい、家族の責任から逃れたいなどの想いから、蒸発してしまい、行方が分からなくなるケース 

C 三つ目は、夫婦関係に不満があって、夫が実家に帰って、別居してしまうケース 

大まかにいえば、3種類のバリエイションがありそうです。 

2.生活費(婚姻費用)の金額はどう決めるのか 

① 夫婦間の合意ができる場合 

夫婦生活をしていくに際しては生活費が必要です。円満に同居している夫婦間であれば、生活費は暗黙の内に決められていき、特に波風も立ちませんが、理屈から言えば、この円満な夫婦生活では婚姻費用分担については黙示の協議(合意のこと)が成立していると、法律的には評価します。 

別居している場合も理屈は同じです。基本的には、生活費の分担は協議で決めていくこととなります。 

ただし、夫が出て行ってしまい、別居となったときには、婚姻費用分担の協議すらできないことも珍しくありません。 

その場合には、次の手段として、家庭裁判所を使って、夫に対して婚姻費用分担請求調停を起こすこととなります。そして、調停の席上で話し合い、合意ができれば、調停成立となり、調停調書に合意内容をとりまとめます。合意ができなければ、家庭裁判所が婚姻費用分担審判を出して決めていくこととなります。  

② 婚姻費用算定表を用いて計算することも有効 

 別居している夫婦間で婚姻費用の協議ができていない場合には、家庭裁判所の調停か審判で取り決めていくこととなるのですが、だいたい、いくらくらいになるかは、最高裁判所のホームページに掲載されている婚姻費用・養育費の算定表を見ると、分かります。 

婚姻費用の算定表では、代表的な家族構成・子どもの年齢構成に応じていくつかの早見表が用意されていますので、参考にしてみるのもいいと思います。 

ただ、実際の家族構成の全てが網羅されているわけではありませんし、夫が出て行って別居しているものの、妻と子どもたちが住み続けている家の住宅ローンは夫が負担し続け、夫は別居先のアパートの家賃も自分で支払っているというような住居費の二重負担の問題など、算定表を使う、いくつか専門知識が必要となってくる場面もあります。 

詳細は弁護士にご相談いただくのがよいと思います。 

また、算定表はだいたい3万円程度の金額幅がもたされていて、調停での話し合いである程度柔軟に決められるように配慮されています。もともとは、婚姻費用の算定式が存在していて、それを使ってドンピシャリの金額を算出することもできますが、その算出についても弁護士にお尋ねいただくのがよいと思います。 

3.生活費(婚姻費用)を請求する方法 

 生活費(婚姻費用)は、協議ができていれば、夫に直接請求していくこととなります。 

協議ができていない場合には、まず、婚姻費用の額を決めるために、家庭裁判所に調停を起こす必要があります。 

夫が不倫相手の家に転がり込んでしまっているケース(A)や実家に帰っているケース(C)の場合には、夫の住所が分かりさえすれば、どこの家庭裁判所を使うかも決まってきますので、あとは、調停申立てをして生活費を請求していくこととなります。 

ただ、夫が蒸発してしまい(B)、なおかつ、住民票も移さず、所在が不明の場合には、生活費を請求する調停すら起こすことができません。このケースの場合には婚姻費用の請求は断念するしかありません。代わりに、離婚の手続を進めるか、失踪宣告の申立てをできるようになるまで待った上で、離婚せずに失踪宣告を出してもらい、夫の財産を相続することで満足するしかほかに方法がありません。 

4.生活費(婚姻費用)を受け取り続けるために 

生活費(婚姻費用)を確実に受け取り続けるためには、婚姻費用分担額の協議がととのい、合意書・協議書を作成することも多いですが、可能であれば、公証人役場を利用して、 

① 公正証書として合意内容を残す 

のが有益です。万が一の不払いのときに、強制執行をすることができます。滞納分も含めて差押えをすることができます。夫の給与であれば、原則的な差押額である給料の4分の1を超えて、半額まで差し押さえることが可能です。 そして、協議ができない場合には、家庭裁判所を利用して、

 ② 調停調書または審判書正本を獲得する 

ということになります。もちろん、効力は公正証書と同じです。強制執行をすることもできます。 

③ 夫の給与を差し押さえる 

婚姻費用を支払わせる内容の公正証書、調停調書、審判書がある場合には、夫の財産を差し押さえられますから、差し押さえる物としては、銀行預金でもよいのですが、定期的に支払われる給与を差し押さえると、差押限度額である給与の半額以内の婚姻費用分担額であれば、毎月、夫の会社(雇用主)から婚姻費用分担額を直接支払ってもらうことができます。 

5.別居によって生活費に困っている方は弁護士にご相談ください 

 夫が出て行った状況にもよりますが、別居中の夫に対して、婚姻費用分担請求を検討するのであれば、まずは、弁護士にご相談頂くのがよいと思います。 

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