
子どもがいないご夫婦の場合には、結婚当時からの登場人物に変化がないこともあって、子育てによるカップルの家事育児負担の変化等による夫婦間の葛藤などはありませんが、それだけに、相手方の心身の変化や相手方の実家との折り合いなどがしこりとなって、関係破綻に発展してしまったり、職場での仕事量の変化や職務上の地位の変化などが家庭内に嵐を巻き起こしてしまうこともあります。
子どもがいない夫婦の離婚では、子どもの親権をめぐる深刻な争いや、面会交流をめぐる激しい攻防戦、養育費をめぐる将来の学費等への不安などの問題が起きない代わりに、相手への不満がありながらも、片方が激しい執着を見せるために、なかなか離婚に踏み切れなかったり、なかなか離婚の話し合いも、なぜか、まとまらないというケースをよく経験します。
子なし離婚、法的におさえるべき3つのポイント
「子なし離婚」の場合には、子どもをめぐる親権、面会交流、養育費の問題が起こらない代わりに、離婚を潔しとしない側からの、配偶者に対する執拗な執着と過大な婚姻費用分担請求の問題に直面することが多く見受けられます。
子どもがいない夫婦の場合、離婚したいと思う側から、離婚要求を突きつけられても、特に離婚までは考えていない側としては、配偶者を手放すのは嫌なようです。自堕落な生活をしていれば、ある程度、家事をやってくれ、生活費も出してくれるというのは、ある意味、快適な生活ともいえます。かつてほど、激しい情愛はないけれども、お金を稼いでくれて、家事もやってくれる配偶者は、甘えて依存する側からみれば、家族としては最高の存在です。そのため、離婚したくない側は、いざ、離婚調停を起こされれば、遠慮なく婚姻費用分担請求調停を起こして、生活費がゲットできれば、もう調停にも興味をなくしてしまうことすら、あり得るのです。
① 財産分与:夫婦で築いた資産をどう分けるか
そのような背景事情を抱えがちな「子なし離婚」ですが、もちろん、子どもの存在とは関係ない離婚給付の問題は当然、起きてきます。子どもの教育費がかからない分、「子なし離婚」の夫婦の場合には、財産分与の対象となる財産が多く存在することが見受けられます。子どもができないことから、マイホームの購入もまだしていないというケースであれば、住宅ローンの負担もないため、夫婦財産の公平な分割は避けて通れません。
「子なし離婚」といっても、離婚原因はまちまちですが、離婚したくない側の配偶者が家事もしないし、就労もしない、というケースでは、婚姻関係が続く限り、いつまでも婚姻費用を支払い続けなければなりません。その総額は莫大なものとなりかねません。財産分与としてまとまった金銭を渡すことで、その地獄から抜け出す手法も検討してみても良いのかもしれません。
② 慰謝料:離婚原因によって請求できるかが決まる
「子なし離婚」の場合でも、一方の不貞行為が原因で離婚問題に発展する場合はもちろんあります。このように一方に明確な落ち度がある場合には、慰謝料の請求も可能ですが、逆に、性格の不一致とか、一方配偶者が適応障害の診断を受けて、生活が自堕落になった等の事情の場合には、慰謝料請求は難しいことが多いです。
「子なし離婚」の場合には、慰謝料にこだわるべきなのか、一刻も早く自由になることが重要なのか、その見極めもしていかなければなりません。
③ 年金分割:見落としがちな将来のための制度?
「子なし離婚」を考えるご夫婦の中でも、若い世代の場合で、一方がほぼ専業主婦であるような形態の婚姻生活だったときには、離婚と同時に自動的に年金分割が実現されることとなりますので、離婚に当たって、特に、離婚時年金分割の協議、調停などを考える必要はないことが多いです。
逆に、「子なし離婚」であっても、昭和の時代に結婚したが、いよいよ永年の我慢も限界にきて離婚だという場合には、家庭裁判所での年金分割の調停または審判が必要となります。特にこの世代では、近い将来に現実に年金収入が大切となってきますので、熟年世代での「子なし離婚」の場合には、年金分割も忘れないでおくようにしましょう。
後悔しないための「子なし離婚」の進め方
一口に「子なし離婚」といってみても、世代によって対応の仕方が違います。また、離婚によって目指すべきメリットも人によってさまざまです。子どもをめぐる争点がない分、離婚によって獲得すべきものを明確にしておくことが必要です。
とりわけ、自由になりたいということが目標である場合には、「迅速な解決」こそが目標となってきます。
後悔しないためには、ご自分が離婚によって何を獲得したいのかを明確にする必要があります。それによって、離婚の実現に向かって踏むべきステップも変わってくるのです。
なぜ「子なし離婚」で弁護士への相談が重要なのか
それでは、なぜ「子なし離婚」で、子どもをめぐる深刻な争点もないのに、弁護士に相談することが重要なのでしょうか。いろいろありますが、やはり、目指すべきものが離婚給付等の財産なのか、苦しい結婚生活からの解放なのか、によって、選ぶべき法的手段も、進行速度も、進め方も変わってくるからなのです。
きちんと財産分与等の離婚給付の権利を実現したいということであれば、入念な準備が必要となりますし、手続的にも慎重に離婚調停等を活用していく必要があります。
他方、一刻も早い結婚生活からの解放が目標であれば、何を犠牲にして、自由を獲得すべきか、大雑把でも速やかに調停を進めるために何をすべきか、といったことが必要となります。
家裁での経験値も、ものを言いますので、その意味で、「子なし離婚」での弁護士への相談は意味があるのです。
まずはご相談ください
子どもがいない離婚だから、簡単だと思われる方はそれでもよいのですが、子なし離婚で目指すべきものがはっきりしてきた方には、それを実現する方法をご相談いただくのがよいように思います。まずはご相談ください。





