離婚に合意しているが離婚条件が決まらない

① 離婚を成立させるために必要となる離婚条件とは

夫婦がお互いに離婚に合意しているが、もろもろの離婚条件の合意ができないことはありがちです。夫婦の間に子どもがいないときは、離婚条件の合意ができていなくても、離婚条件は離婚後に協議をすることとして、離婚届を出すことは可能です。また、夫婦の間に未成年の子どもがいるときは、離婚後の単独親権者をどちらにするかの合意ができさえすれば、そのほかの離婚条件は離婚後に協議をすることとして、離婚届を出すことは可能です。

 離婚を成立させるのに、どうしても合意しておく必要のある離婚条件は、未成年の子どもがいる場合の離婚後の単独親権者指定の部分だけです。

 それ以外の離婚条件は、離婚後に取り決めてもかまいません。ただ、ふつうは、全部の離婚条件が合意できなければ、離婚に踏み切る気持にはなれないという方が多いですね。

 個別の離婚条件ごとにみていきましょう。

未成熟の子どもがいるときの養育費

 未成年の子どもがいる夫婦の間で、離婚後の親権者をどちらにするかの合意も得られていれば、離婚届の提出は可能ですが、やはり、養育費は決めておきたいもの。

 養育費の金額自体は、最高裁判所のホームページで養育費の算定表が公表されていますから、夫婦双方の年収が分かれば、自動的に判別できます。少し金額の幅がありますから、その中で取り決めていけばよいのです。この算定表の金額から大きくはずれる額を主張された場合には、うかつに合意することはやめておいた方がいいでしょう。出るところ(家裁)に出れば、今の時代は、この算定表に従った最終判断が出される傾向が強いからです。

 養育費をいつまで払ってもらうことにするのか、も決めておくのが無難です。成人年齢の18歳までという取り決めは比較的少なく、旧成人年齢の20歳までというのが多く見られます。夫婦双方の学歴が高い場合には大学卒業が見込まれる22歳に達する年の3月までという決め方をすることもあります。

 とはいえ、養育費の支払いを渋る人がいることも事実です。無理して妥協するよりは、離婚届だけ出してしまい、後から、養育費を取り決めることにしてもいい場合もあります。

 

② 未成年の子どもがいるときの面会交流

 離婚後に子どもと一緒に暮らすことがなくなる親と子どもとは定期的に会う機会を作ってあげ、交流ができるようにしてやることが今の家庭裁判所では義務づけられています。協議がこじれて、家裁で決められた場合、かなり不本意な決められ方をされることもありますので、できれば、別に暮らす親には定期的に子どもと会う機会を作ってあげる、面会交流の取り決めもしておくとよいでしょう。

 ただ、面会交流は別に暮らす親が子どもと交流するための制度ですから、夫婦として終わったのに、子どもをだしにしてよりを戻そうとする手段ではありません。面会交流の合意ができない場合に、相手方におとなであるあなたへの接触を保ちたいという欲求が見られたときは、安易な妥協はしない方がよいかもしれません。家裁で厳格に決めることがましな場合もあります。

 

③ 離婚時年金分割

 熟年夫婦が離婚する場合には、年金分割も離婚条件の一つとなります。ただ、年金分割は出るところ(家裁)に出れば、上限の按分割合で分割してもらえます。養育費以上に機械的に決められていますので、年金分割に関して妥協する必要はありません。離婚時に合意できなければ、離婚届だけ先に出して、離婚届から2年以内に家裁で年金分割の審判をとり、社会保険事務所に届け出ればそれでかまいません。

 

④ 離婚慰謝料

 慰謝料は、相手が違法行為をしたために離婚をするほかなくなったときのように、相手方に違法行為があったときだけに発生します。精神的苦痛の代償です。不貞行為が典型です。違法行為から3年以内に解決する必要がありますが、必ずしも、離婚と同時に解決する必要もありません。離婚を先にして、その後で、慰謝料を請求する訴訟や調停をしてもかまいません。もちろん、違法行為の証拠は確保しておかないと敗訴します。

 

⑤ 財産分与

 財産分与は、別居の時点で夫婦が持っている、夫名義の財産全部と、妻名義の財産全部とを合計して、2で割った額をはじき出して計算された額を基準として、離婚する双方がこの金額を持てるようにすることとし、多く持ち過ぎている側から不足している側に不足分を渡すことをさします。

 大前提として、相手方名義の財産を知っておく必要がありますし、あなた名義の財産も開示することが前提となります。相手方が全財産を開示していないのではないかという疑問がある場合には、調査をする必要がありますが、現実にはなかなか難しいのです。

 家裁を使って、相手方名義の財産を調査していく手段もありますが、時間がかかるのと実効性が確保されていない難点もあります。離婚時に同時に合意しておきたい離婚条件だといえますが、財産分与も離婚後2年以内であれば、家裁に申し立てることもできます。

 

⑥ 離婚後の苗字や戸籍の問題

 法律的には離婚条件とはいいにくいものですが、結婚によって苗字を変えた側が離婚後に旧姓に戻るのか、結婚中の苗字を使い続けるのか、についても離婚条件として合意してしまうケースも見かけます。旧姓を使うか、結婚中の苗字を使い続けるかは、その人の単独の権利ですから、仮に、相手方と合意していたとしても、役所への届出一本で好きにすることはできます。

 ただ、そうすると、無効な合意であっても、後日、相手方とのトラブルを誘発することは避けられません。

 

⑦ 離婚条件の決め方アラカルト

 離婚条件はどうしても夫婦双方の話し合いで合意できなければ、家裁の調停を使うことになります。合意している離婚自体も含めて離婚調停を使うことが多いですが、離婚届を先に出して、財産分与や面会交流といった個別の離婚条件ごとに調停を使うこともできます。そうすると家裁に納める手数料が増えてしまうので、離婚調停という形でまとめて申し立てる人が多いのです。

 

⑧ まとめ

  離婚条件だけが整わないというときは、どの離婚条件が残っているのかに応じて選択肢を絞っていくことになりますね。年金分割だけが残っているというのならば離婚届を先に出して年金分割だけ家裁の審判で決めるのがよいでしょうし、養育費や面会交流といった離婚条件が合意できていないというのならば離婚調停を使ってまとめて話し合う方が効率的ということになるでしょうね。

 

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