① 離婚では男性は不利?
日本での離婚のイメージは、ドラマを見ても、子どもを取られて、自由に会えなくなり、慰謝料も養育費も取られて、踏んだり蹴ったりだというのが、多くの方の実感ではないでしょうか。
慰謝料は不倫をしたとか、暴力をふるったとか、身に覚えのある、悪いことをした場合でないと発生しませんから、それは別として、それ以外は確かにそうなることが多いのです。とはいえ、別の見方をすると、それが不利ということではありません。
子どもを取られるというのは、多くの場合、女性が仕事を中断して育児をして、小さい子どもとの間では強い愛着関係を形成してしまいます。これを壊すと子どもに大きなダメージが与えられるので、離婚するときは子どもの親権は母親となることが多くなります。育児休暇などは女性には長期間与えられ、男性にはそれほどの期間は与えられないといったようなおとなの事情はありますが、子どもからみたときのダメージを少なくするのが主眼です。
養育費は確かに最近では、厳しい判断をされる傾向があります。離婚前に妻がこしらえた多額の夫名義の借金があり、その返済もあることから、支払能力がないのに、それを無視した養育費の決定が出てしまうことも少なくありません。
とはいえ、実態を無視した養育費の決定の場合には、差押えの局面では、必要最低限の救済はあり得ます。
傾向として、離婚は、確かに男はつらい局面ですが、高めに決められた養育費でも、今後の再婚によって、次の妻との間に別の子どもができれば、食い扶持が増えることになりますから、養育費減額請求ができる場合があります。
虚心坦懐に現実を見つめて、的確な離婚条件の予測と覚悟の上で、離婚を勧めていくことになります。
② 子どもは自分のことではない?
時として、離婚までは我慢していたが、離婚するならば、と思い切りができて、実は、子どもは自分の子ではないという男性を見かけます。顔が似ていないとか、判断根拠はいろいろです。
しかし、誰の精子を迎え入れたのかということに関しては、さすがに女性は確実に事実をつかんでいます。これまで、多くの事例をみてきましたが、自分の子ではないという男性の主張が正しかったケースは2例しかありませんでした。
一つは、女性がかたくななまでにDNA鑑定を拒み、自分のDNAのサンプル採取はもちろん、子どものDNAのサンプル採取をも強行に拒んだケースです。これなどは、女性が誰の精子を受け入れて、誰の子を産んだのかを的確に100パーセント把握している事実を、逆に明確に証明していたケースでした。DNA鑑定の結果、この子はこの男性の子ではありませんでした。
もう一つは、男性が無精子症だったことが判明したケースでした。女性側としては男性の精子を受け入れたと認識していたため、DNA鑑定を拒むことはありませんでしたが、結果として、子どもはこの男性の子ではありませんでした。危険日の性交渉の相手はこの男性だったことだけは確実でしたが、この男性は無精子症だったのです。だから、この女性は、同時に別の男性とも性交渉を持っていたことになります。
とはいえ、事実上、妻の不貞行為が分かったのですが、男性にとって種なしというのは、やはり名誉とプライドを大きく損なうものです。
子どもが自分の子ではないという主張をしようとするときは、慎重に検討する必要があります。
③ 養育費を払いたくない
最高裁判所が養育費の算定表を公表してから、養育費を払いたくないという男性の野望は実現しないこととなりました。
そのため、養育費については、適正額の支払いにとどまるように努力することとし、私立学校の教育費などの上乗せの主張に反対するようなことが主流となっています。
ただ、養育費の算定表は、割と単純な家族構成しか想定されていませんので、前妻との間にも子どもがいるというような算定表に当てはまらないケースの場合には、養育費の試算をしていくこととなります。
④ 親権を取りたい
日本の社会のいまの実情では、離婚後に男性が子どもの親権を獲得することは難しい状況です。
それでも、まれに子育ての中心が父親であった場合には、親権の獲得ができることがあります。
また、子どももかなり大きくなり、高校生となり、大学進学を目指して、経済力の豊かな父親のもとで暮らすという選択もあり得るところです。
とはいえ、男性が子どもの親権を取るのはやはり難しいところです。そのため、現在、離婚後共同親権制度の立法作業が進められています。離婚後共同親権が実現するかどうかはまだ分からないところですが、法務省はかなり前向きなように感じられます。どの場面で、どのような共同親権になるのかは、なかなかイメージがつかみにくいところです。新聞記事をご注目ください。
⑤ 実はDVの被害を受けていた
DVというと、女性が被害者であるケースがほとんどです。ただ、まれに男性が被害者であるケースもあります。男性が被害者の場合には、加害者の妻は体格的には夫よりもはるかに小柄であることが多く、体重も少なく、華奢であることが多いのです。それなのに、どうして、男性が被害者になってしまうのかというと、男性の動きを封じる女性ならではの行動を取ります。
刃物などを持ち出すのです。別に、夫に刃物を向けるわけではありません。自分ののど元に刃物を当てるふりをします。夫があわてて止めに入って、刃物を取り上げて、背を向けた瞬間に、加害者である妻は、後方から男性の股間を蹴り上げます。そうすることで、夫は10分程度は身動きがとれなくなります。こんなことは、心を許している妻であるからこそ、可能になることです。極限の痛みに苦しむ夫に対して、今度は、妻は殴る蹴るの暴行を数十分にわたり、継続します。
次からは、夫は、妻が怒鳴るだけで行動を支配されてしまいます。股間を蹴り上げなくても、夫は抵抗できなくなっており、ハンドバックでたたかれたり、体のあちこちを蹴飛ばされたりということが日常化していきます。
女性がDV被害を受けている場合には、加害男性のマインドコントロールを受けていることから、DVの犠牲になっている認識がなかなかもてません。そのため、他人に相談することができないままで被害が継続します。
男性がDV被害を受けている場合には、マインドコントロールが効いているのは、抵抗できなくなる限度ではそうなのですが、他人に相談できないのは、マインドコントロールで被害を認識できていないからではなさそうです。むしろ被害は自覚していて、それでいながら、女にやられていることを恥に思って他人に相談できないことの方が多いように思います。
とはいえ、やはりまれなケースとはいえ、きちんと相談して、救済を受けるのが理想です。
⑥ まとめ
男性が離婚するとなると、何かと失うものが多いように感じて躊躇してしまうかもしれませんが、視点を変えて養育費や親権のことを見ていくと、実は、子どものために子どもが優先されているというだけのことも多いのです。また、数は少ないですが、男性側が結婚生活で被害を受けていることもあります。男としてのプライドが告白をじゃましがちですが、乗り越えて相談をしてみることも必要です。