1.離婚調停は自分で進められる?
離婚調停は、家庭裁判所が主催して離婚の話し合いを進めていき、離婚条件を詰めていくものです。裁判官1名と調停委員2名とで構成される調停委員会が、夫と妻との離婚の話し合いの間に関与して、公正中立な立場から紛争の解決を図るシステムです。
離婚調停はあくまでも話し合いですし、直接担当する調停委員は必ずしも弁護士であるとは限らず、むしろ大多数の調停委員は法律の専門家ではありません。その意味では、弁護士をつけることなく離婚調停を進めていくことは制度上は可能ですし、現に、弁護士をつけないで調停に出席している人も珍しくはありません。
そういう意味では、訴訟と違って、離婚調停は弁護士なしで進めていくことはよく見かける光景です。
2.離婚調停を弁護士なしで進めるメリット・デメリット
それでは、離婚調停を弁護士なしで進めるメリットとデメリットはどのようなものなのか、見ていくこととしましょう。
まず、弁護士なしで、自分だけで進めていくメリットとしては、①調停期日の日程調整がスムーズに進み、調停の進行を早められる、ことが挙げられます。離婚調停は初回期日で話し合いがまとまることは少なく、課題を明確にして、次回に向けて検討材料を示して考えてきてもらったり、必要な資料を準備してもらうなどするため、何回か調停期日を重ねる必要性があることが多いです。その際に、弁護士がついていると、調停委員2名、裁判官1名と相手方との間で、なかなか日程が合わず、次回期日がかなり先延ばしになってしまうことがあります。日程がそろっても、裁判所の調停室の空きがないこともありますので、なかなか近いところに次回期日が入らないリスクが出てきます。弁護士がついていなければ、日程調整が難航することは少ないのが一般です。
また、弁護士がついていなければ、ひとまず、自分の言いたいことが全部調停委員にはき出せる、ことも挙げられます。
そして、弁護士をつけないのだから、弁護士費用もかかりません。
とはいえ、弁護士をつけずに離婚調停を進めていくことにはデメリットもあります。
家庭裁判所の調停委員は良くも悪くも中立公正です。中立公正というのは、別の言葉で言えば、夫と妻とどっちが勝っても、興味も関心もないということを意味しています。調停の進行局面で、夫側に少し足りない部分があって、ちょっと助言をすれば気がつくという場合でも、関心も興味もないから、助言もしないということも出てきます。弁護士がついていれば、この進行局面で、これが足りないなという部分について臨機応変に調停の現場で助言が得られたり、代わって発言してもらえたり、ということが期待できます。
また、家庭裁判所で離婚調停がかかるときには、同時に、婚姻費用分担請求調停とか、面会交流調停といったような関連するけれども、形式上、別の調停事件として手続をとらなければならない必要性が出てくることがあります。調停委員からも、婚姻費用分担請求調停をやらなくていいのか、面会交流調停をやらなくていいのか、という助言が受けられることもありますが、弁護士がついていれば、どのタイミングで関連する別件調停を立てるかということも最初から視野に入れていくこととなります。
家庭裁判所の調停委員は必ずしも法律的な専門家ではありませんが、内部研修などを受けていて、それなりに離婚に関する知識は豊富です。しかし、調停委員は弁護士ではありませんから、離婚に関する専門的な知識をかみ砕いてあなたに説明するのがうまいという訳でもありません。調停に弁護士がついていれば、調停委員からの説明が十分理解できないで困った顔をしているあなたに、調停委員の発言の意味合いをその場で説明して、どのように対処するのがいいのか、即答するのがいいのか、検討時間をもらった方がいいのか、といったことも対処してくれます。いったん軽率な発言をしてしまえば、取り返しがつかなくなることは少なくありません。
さらに、調停をまとめるタイミング・機運というものがあります。そこの見極めを弁護士にさせるのも、調停に弁護士をつけるメリットです。一般的には初回期日で離婚調停を成立まで持っていくことは少ないですが、初回期日で調停がまとめられそうであれば、下手に長引かせることなく、離婚調停をまとめてしまうことは可能です。ただ、慣習的に調停委員は初回期日は対立点の確認などをする頭出しに過ぎないという思いこみが強いため、その思いこみを覆して、調停を成立させるには大変なエネルギーが必要です。弁護士がついていれば、初回期日で調停がまとまりそうな気配が出てくれば、家庭裁判所が動きやすいように、その場で調停条項案を整理したり、養育費の計算をしたりして、続行することなく、調停をまとめる努力をしてくれるはずです。
3.離婚調停を弁護士に相談するメリット
このように、離婚調停を弁護士に相談するメリットとしては、①担当の調停委員の発言の意味合いを探り、それに対する効果的な対応を提案してもらえる、②離婚調停とは別件になってしまうが、同時に話し合うべき関連事件を調停として申し立てる準備をしてもらえる、③調停の流れを把握し、調停が自分の思う方向に進んでいるのか、進んでいないとすれば、今後、どのように対処していけばいいのか、といった点をアドバイスしてもらえる、④調停をまとめるべきタイミングを逃さないように、調停の流れをみてもらい、調停成立に向けてのアドバイスをしてもらえる、という点が挙げられます。
これらの点に気がつかないまま、漫然と調停期日を過ごしてしまうと、いたずらに話がかみ合わないまま、調停が長期化したり、果ては、調停の話し合いが決裂して、離婚訴訟をしなければならなくなったりしてしまいかねません。
4.離婚調停の弁護士費用について
当事務所では、離婚調停だけでお受けする場合、関連事件として婚姻費用分担請求調停もお受けする場合などにつきまして、料金表をお示しさせていただいております。詳しくは、料金のページをご覧ください。
5.山口で離婚をお考えの方へ
離婚調停は弁護士をつけなくても進めていけなくはありませんが、弁護士をつけていれば調停室に出向くのも一人ではないだけでも、緊張と不安はやわらぎますし、相手に弁護士がついているのであれば、やはりこちらも弁護士をつけておくのに越したことはありません。また、家庭裁判所には調停委員の都合というものもあります。調停委員の都合だけで人生を左右されそうになってしまうことがないようにする意味でも弁護士がついていれば、おかしなことはおかしいと指摘してもらうこともできます。最近の離婚調停には弁護士が関与することがかなり多くなってきています。自分だけが丸腰にならないように気をつけたいものですね。