離婚の際に押さえるべきポイント

① こちらにも真実と正義があるように相手にも相手なりの真実と正義がある

 離婚条件に向けて対立している相手と、あなたとでは、同じ出来事ひとつを取ってみても、その見方・受け止め方は同じではありません。何が正しいのかという判断基準も相手とあなたとでは同じではありません。

 漫画やアニメでは、よく、真実は一つ!という言い方をしますが、真実と正義は人の数だけあると見る方が正確です。そう思っていないと、離婚協議の際に、自分他は正しいのにあいては間違っているという思いこみから、泥沼の長期紛争へと発展してしまい、せっかく人生を前向きにリセットするチャンスなのに、時間を無駄にしてしまうことになります。

 相手と一応の合意をして、離婚届を提出して、人生をリセットできる人が多いことは、自分の思っている正義や真実を一部妥協してでも、新たな人生に向けて動き出したいと思う人が多いことの表れかもしれません。

 

② 調停委員や裁判官は何も知らない

 相手と離婚条件の合意ができなければ、家裁を利用することになります。担当する家事調停委員や裁判官ならば、真実を分かってくれるはず、と考える方は多いのですが、果たしてそうなのでしょうか。

 ニュース番組でも、真実をあきらかにするために裁判を起こしました、という記者会見をよく目にします。しかし、裁判は真実に基づいて行うわけではありません。民事訴訟法や家事事件手続法、果ては、刑事訴訟法といった裁判に関するルールを定めた法令のどこを見ても、裁判を真実に基づいて行うという規定は見あたりません。

 裁判所や調停委員は、真実に基づいて事実認定をするわけではなく、証拠に基づいて、あるいは調停や裁判プロセスでの当事者の動きなどを見て、対立して主張される事実のうち、どちらが正しいのかを判断していくだけです。証拠が決め手というわけです。もちろん、証拠といっても、契約書のような一義的な証拠だけではなく、お互いの証言というような供述証拠も立派な証拠です。

 真実に基づいて事実認定をすることは理想ですが、裁判官も調停委員も結婚生活を見ているわけではありませんから、真実は知りません。一人で何件も担当事件を抱えていれば、特にあたなの事件だけに特別な関心を払うことはありません。あなたにとって、離婚は人生の一大事でも、裁判官や調停委員にとっては、見慣れた、たくさんある紛争の一つに過ぎないのです。だから、印象的に記憶に残してもらうこともありません。

 まずは、裁判官や調停委員は、あなたの受けてきた仕打ちを何も知らないし、特に関心も持っていないということを認識することから始めましょう。その上で、何も知らない人たちに、どうやったら、あなたの辛い状況を理解・共感してもらえるのか、自分の動き方を考えていくことが大切です。

 

③ 相手がいることだから、100パーセント要求を実現するのは困難

 結婚が一人でできなかったように、離婚するにも相手がいます。あなたにはあなたの正義に基づいて必要な要求があるのに対して、相手にも相手の正義に基づいた要求事項があります。どこまでいっても、相手のあることですから、間に調停委員を挟んで話すにしても、あなたの要求を100パーセント通そうとすることは離婚紛争を長期戦の泥沼に持ち込む原因となります。

 さらにいうと、間に立つはずの調停委員や裁判官にも、彼らなりの正義があります。それがあなたの考える正義と一致すればよいのですが、多くの場合には、ずれが生じます。一生懸命、あなたの要求を説明してみても、逆に、あなたの方が非常識に見られてしまっていることも少なくありません。

 

④ 自分の考えや思いを他人に理解してもらうように伝えるのは至難の業

 法律的な主張にしても、争いのある事実関係についての主張にしても、いくら一生懸命説明しても、思考回路が違う他人に正確に理解してもらえることはあまりありません。よほどの文章使いの達人でない限り、そんなことは不可能です。われわれ弁護士が、裁判書類を作成していく場合も、最初は自分なりに理解しやすいように、整理して、文書作成していきます。しかし、次第に担当裁判官や担当調停委員の言動から、書いて伝えたはずのことが理解されていないと感じたときには、担当裁判官や担当調停委員の言動から見えてくる、その人の思考回路にも注目するようにしていきます。

 職種によっても、思考回路の違いがあります。そのため、われわれは裁判官が弁護士の文書はここがわかりにくいと得意げに発表している論文も見ていくようにします。別に、全ての裁判官に当てはまるわけではありませんが、裁判官という職種に就いている人間の思考回路の共通性もあります。それを踏まえて、彼らが分かりやすいと考えている文書を作るように努力したりしていきます。

 真実や正義が人の数だけあるように、「分かりやすさ」もまた人の数だけあると思ってもらう必要があります。

 普通のありきたりな離婚の主張は、裁判所に理解してもらいやすいですが、ちょっと珍しい主張や、普段見慣れていない主張をしても、理解してもらえないことが多いのも、それが「分かりにくい」からです。裁判に高率で勝つのは、裁判官が分かっている知識の範囲内だけです。

 

⑤ まとめ

 離婚の際におさえるべきポイントは、法律上どうなっているかということに限らず、離婚を実現していくまでに関与してくる職種の人たちの動向もあります。それを踏まえて、あなたがどうすべきかも決まってきます。関与してくる人たちの行動特性を知らないでいると、いつまでも分かってもらえないというストレスだけが増えていってしまいます。

 

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